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東京リノベトップインタビュー > mihadesign(ミハデザイン一級建築士事務所)

mihadesign(ミハデザイン一級建築士事務所)

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vol.4

一度ひっくり返して

考えてみる。

思いがけない発想が

生まれる。

 

 

 

 

1964年の東京オリンピックの前年、大会役員の宿舎として建設された「目黒柿の木坂アビタシオン」。当時話題となったマンションの一室にあるのが、ミハデザイン一級建築士事務所。今回ご紹介するのは、テレビでも紹介された斬新なリノベーション住宅を生んだ建築家・光本直人さんと濱名直子さんです。(現在は目黒区大岡山に拡張移転しております)

 

光本直人

1997年、東京理科大学 大学院理工学研究科 修士課程建築学専攻修了後、

株式会社シーラカンスアンドアソシエイツを経て、

2006年、ミハデザイン一級建築士事務所を共同設立

2012年、明治大学兼任講師

 

濱名直子

1998年、東京理科大学 大学院理工学研究科 修士課程建築学専攻修了後、

有限会社architecture WORKSHOP濱名直子設計室を経て、

2006年、ミハデザイン一級建築士事務所を共同設立

 

http://www.mihadesign.com

 

聞き手/株式会社フリーダムコーポレーション代表取締役

    「東京リノベ」主幹        谷村泰光

 

 

 

──なぜ、建築家を志したのですか。

光本 実家は神奈川県の秦野で、3人きょうだいで育ちました。母親が子どもの成長にあわせて家に手を加えることが好きだったので、「あこがれを持って住まいを変えよう」といった環境の影響を受けたのかもしれません。

濱名 私のほうは祖父が大工で、母の実家に行くとつねに家が増築されている状態にありました。一方、母は片付けが苦手だったので、家の中は来客があるとちょっと困るような状態(笑)。モデルハウスのような家に住みたいという思いから、この分野に進みました。

 

──同じ大学院で学んだそうですが、どんな学生生活でしたか。

光本 大学に入ったときはバブルの最中で、卒業する頃から次第に雲行きがあやしい状況に。建築も派手な外観より生活者の視点を生かすことに重点がおかれ、実質的なデザインに向かっていました。そんな時代に学んだ大学院では、光の入り方など条件の異なる空間の中で人間はどう行動するのか、それを踏まえ、どう部屋を作っていくべきかを研究していました。

濱名 大学院では大きな家のような街づくりを経験しました。千葉の山田町(現在は香取市)に住む知り合いから、お祭りの企画のひとつとして、山の斜面に植えた山百合のライティングを依頼されたんです。そこで、ワークショップを開催し、和紙で風船のはりこを作って照明を仕込み、みんなで持って歩くことで明かり自体がお祭りを表現する、といったイベントに取り組みました。光本も私も、大学院時代の経験が今の活動のベースになっていると思います。

 

──その後、共同で事務所を設立するまでを簡単にお聞かせください。

光本 母校の教授も務めていた小嶋一浩先生が共同主幹するシーラカンスアンドアソシエイツに入社し、学校建築や公共建築などを数多く経験しました。一方、明治大学で設計製図の兼任講師を今も続けています。

濱名 私は、architecture WORKSHOP入社早々、公立病院建築のチームに入りました。しかし、学生時代から付き合っていた光本と結婚し、妊娠・出産。辞めさせられるのかなと思いましたが(笑)、産休・育休をもらって実家の近くに住み、母にサポートしてもらいながら仕事を続けていました。

光本 この仕事は時間が不規則ですからね。上の子が小学校に入学したとき、子育てしやすい仕事のスタイルを考え、濱名と共同で今の事務所を立ち上げました。家庭生活の経験は仕事にも活かされています。

 

──子育て家族の住宅リノベーションはテレビの情報番組でも取り上げられたほどで、反響も大きかったと聞いています。

光本 69㎡・2LDKのマンションのリノベーションで、お客様は、12歳から0歳までの4人の子どもを持つご夫婦。狭さを克服して、家族それぞれのプライベートな空間を確保できた点で好評でした。全体を感じる空間が欲しかったので、小部屋で区切る代わりに大きな箱状のものをを置いてみたんです。番組終了後、早速問い合わせがありました。

 

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──箱とはユニークな発想ですね。

濱名 箱の下がベッドになっているので、小さいながらも各自のプライバシーが守られます。一方、箱の上は抜けているので広い空間が生まれるわけです。将来、子どもたちが独立したあとを考えると、小部屋に分けてしまってはもったいない。家族の成長にあわせて対応できるように設計しました。

光本 設計プランを練るとき、大枠からまとめていく感覚が強い私に対し、濱名は細部から積み上げたい感覚が強い。考え方が違うから、面白い発想が生まれるのかもしれません。ふたりに共通するのは、お客様のご要望を受け入れた中で一度ひっくり返してみること。ひっくり返すというのは否定するのではなく、消化したうえで違うもので満たし、再構築するということです。

濱名 モノのとらえ方は違っても、モノ作りのスタンスはまったく同じですね。

 

──しかし、箱を置くとはあまりにも斬新すぎて、お客様は驚かれたのでは?

濱名 それが、最初からとても喜んでいただけたんですよ(笑)。

 

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──リノベーションの面白さはどこにあると思いますか。

光本 料理にたとえると、新築は材料も調理方法もまったく自由なわけですが、リノベーションの場合は用意された材料を基本に調理方法しなければなりません。できるメニューも限られているから、かえって想像もしなかった方法が思いつく。条件が厳しいほど、面白い結果が出る場合もあります(笑)。

濱名 生活をがらっと変えるのではなく、今まで使ってきたモノや大事にしてきたモノも活かせるも、リノベーションならではの魅力だと思います。みなさん、消費することにあまり価値を感じなくなっているのではないでしょうか。

 

──街のリノベーションのような活動にも参加されているとか?

光本 私の故郷・神奈川県秦野で2011年秋から行っている街づくりプロジェクト「ハダノワ」です。昭和初期の倉庫を使い、地元の人たちと一緒にワークショップや室内演奏会などを実施しています。商店街の中にある洋風建築なのですが、商店街そのものに元気がない。歴史的遺産を活用して人が集まる空間をつくることで、街の新しい個性を創出できればいいのですが…。

濱名 私たちは「便利だから」だけではなく、「好きだから」という理由で東京に住んでいるように感じます。新宿には新宿の、渋谷には渋谷の個性があるように、地方の街にもそれぞれ個性があるはずです。交通機関もネット環境も充実した今、東京と地方、両方の魅力を享受できる生活が理想的ですね。

光本 東京と地方の垣根を取りのぞき、生活の場としてもう少しフラットに考えるべき時期に来ているのでしょう。住みやすい街をつくる「ハダノワ」プロジェクトのような活動にも積極的に参加していきたいと思います。

 www.facebook.com/hadanowa/

 

──街のリノベーションが活発になると、建築家のみなさんの活躍の幅が広がり、今後の仕事がますます楽しみですね。

 

インタビューを終えて

それぞれが個性的な建築家でありながら、実生活ではご夫婦。お互いを認めながら良い意味でぶりかり合い、高め合っていく。そんな光本さんと濱名さんの仕事の中で特に惹かれたのが、空間をスタッキングする発想の住宅リノベーション。わずか18㎡の極小ワンルームから2LDKファミリータイプまで対応可能なので、狭いスペースを有効活用したい方は必見なのでは?「お客様のご要望を受け入れつつ、一度ひっくり返してみる」というのが、おふたりの仕事に対する考え方。このプロセスがあるからこそ、

「頼んでよかった」と納得できる答えが得られるのでしょう。

(谷村泰光/2013年9月取材)

 

 

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写真左より、濱名さん、光本さん、谷村

 

 

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